「騎士道精神」は消えた

執筆者:喜文康隆 2001年9月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

「太陽の下、人間が創作したあらゆる種類の発明は保護に値する」(合衆国第三代大統領ジェファーソンの言葉)     * 青色発光ダイオード(LED)の開発者である中村修二・米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授が、かつて勤務していた日亜化学工業に対して正当な報酬を求める訴訟を起こした。 マスメディアの報道はおおむね中村に好意的である。徳島の田舎企業を世界が注目する高収益企業にまで押し上げた中村の歴史的な発明に、わずか数万円のお金でしか報いなかった日亜化学経営陣のセンスのなさを、知的財産権の時代に、また個人の自立の時代に逆行しているとして批判する論調である。 九月三日号の『日経ビジネス』の表紙で中村は、闘志を剥き出しにしてカメラ目線をキメてみせる。記事中では、輪島功一のカエル跳びを彷彿とさせるような、ボクシングのファイティング・ポーズさえとってみせる。 しかし、中村は誰に対して闘っているつもりなのだろうか。それは本当に胸を張れることなのだろうか?特許の本質は「独占」 資本主義社会は、あらゆるモノの関係を「お金」という価値の尺度に置き換える。 この二百年あまりの世界の経済を動かしてきた産業資本主義は、お金を「資本の運動」に動員し、社会のあらゆる経済行為をまきこんでいく仕組みだった。アダム・スミスが「神の手」と命名した分業システムが生み出す不思議な調和。デヴィッド・リカードが指摘した地主・資本家・労働者の間の分配法則。そしてマルクスが資本と労働の間に見いだした「搾取」の構造。人間観・社会観によって意味付けは異なっても、資本主義の価値の源泉を「人間の労働」に置き、そこから資本が社会システムのなかで機能する条件を見出そうとした点は共通している。

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