イスラム諸国に押し寄せる「女性の政治参加」の波

執筆者:立山良司 2001年9月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: 中東

 湾岸戦争から八カ月後の一九九一年十一月、クウェートはあちこちに戦争の傷跡を残しながらも、改革への希望にあふれていた。「民主化こそクウェートの安全保障の基礎。そのためには女性にも参政権が与えられるべきです」。女性ジャーナリストのジャセム・ムッタワさんはエネルギッシュに女性の政治参加の必要性を強調した。だが十年後のクウェートで、ムッタワさんの希望は未だに実現していない。 イスラム世界では一様に女性の政治参加は阻害されている、というのが一般的なイメージだろう。しかし、実態はまちまちだ。インドネシアではつい最近、女性大統領が誕生したし、トルコやパキスタンは女性首相が活躍した経験を持つ。アラブ諸国でも共和制をとっている国はほとんど基本的に女性の参政権を認めているし、王制のヨルダンやモロッコも同様だ。これと対照的なのが王制や首長制の湾岸アラブ諸国だ。サウジアラビアでは参政権どころか、未だに女性は外出が制限されているし、車の運転もできない。それでも変化の波は押し寄せている。 女性の政治参加に最も積極的なのはオマーンだ。九四年には「シューラ議会(諮問評議会)」における女性の選挙権、被選挙権が認められた。昨年九月の選挙では定員八十三のうち女性が二人当選した。また、任命制の国家評議会では四十八人中五人が女性だ。バハレーンでも昨年十月に、女性四人が初めて任命制の諮問評議会メンバーに選ばれた。カタルでは九九年に行なわれた地方行政に関する諮問評議会選挙で女性の参加が認められ、女性候補も出馬したが全員落選した。ただ、いずれの評議会も立法権はなく、諮問機関以上ではあり得ない。その意味で「民主化」「女性の政治参加」といってもかなり限定がある。

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