ビン・ラディンが一撃したアメリカニズムの臨界点

執筆者:喜文康隆 2001年10月号

「しかしながら、社会は不断に相互に傷つけあい、害しあおうと待ちかまえているような人々の間では存立することは不可能である」(アダム・スミス『道徳情操論』)     * 誰もが苛立っている。ふだんなら笑って過ごせるようなことに妙に気分を逆立て、暗黙の信頼によって成り立っていた関係に微妙な違和感を覚える。恐らく世界のあちらこちらで、同じような摩擦が起きていることだろう。 原因をたどってみれば、全てがあの日に帰着する。九月十一日、ニューヨーク・マンハッタンのワールド・トレード・センターに突っ込んだ二機の民間飛行機。五千人の命を飲みこみつつ崩壊した百十階建てのビル。それを世界に同時中継する通信・放送のネットワーク。映像は、世界中の数十億人の人間の脳に刷り込まれ、それまで数十年かけて構築された「価値の尺度」を大なり小なり破壊した。

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