視点をずらすと逆転するスリランカの対立構図

執筆者:立山良司 2001年11月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

「地図を見てください。我々のシンハラ仏教社会が、どれほど小さく弱々しいかお分かりいただけるでしょう」。スリランカのシンハラ人比丘(仏教僧)はカリフォルニア大学教授のユルゲンスマイヤーに対し、多数派でありながらいつも自らの存在に脅威を感じているシンハラ仏教徒の恐怖心についてこう語ったという(ユルゲンスマイヤー著『ナショナリズムの世俗性と宗教性』)。 スリランカではヒンズー教徒主体のタミル人過激組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が分離独立を求め、政府との武力対立を二十年近く続けており、犠牲者はすでに六万人を超えている。「イーラム」はタミル語でスリランカを意味し、虎は十一世紀にスリランカ北部を支配した南インドの王朝の紋章である。 LTTEが「テロ集団」として恐れられているのは、パレスチナのイスラム組織ハマスを上回るような、死を恐れない殉教精神を持っているからだ。若いメンバーは自爆テロをいとわず、生きて逮捕されないよう自殺用の青酸カリを首から下げている。女性活動家が多いことも特徴で、自爆テロの三分の一は女性によって行なわれている。彼らを過激な行動に駆り立てているのは、宗教の教えだけでなく、多数派の政治的、文化的な強制に対抗し自分たちのアイデンティティを守り抜こうとする少数派としての防御意識だ。

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