バルカン半島 「善玉」と「悪玉」は入れ替わるか

執筆者:菅原出 2001年11月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 米国同時多発テロとそれに続く反テロ戦争は、バルカン半島の政治勢力バランスを大きく変える可能性を秘めている。オサマ・ビン・ラディンのバルカン・ネットワークが次々に解明される中で、米国が従来のバルカン政策を転換する可能性が高いからである。 ビン・ラディンのバルカンとの関わりは、九〇年代のボスニア紛争にまで遡る。この時、セルビア人やクロアチア人と戦うボスニアのイスラム教徒を助けるため、何千人というイスラム義勇兵が世界中からボスニアに駆けつけた。八〇年代のアフガン戦争と同様、当時米国は、パキスタンの軍情報機関(ISI)を使って、イスラム義勇兵をボスニアに送り込む工作を行なった。そしてこの時に、アル・カエダもバルカンに拠点を作った。 ボスニア紛争後、ビン・ラディンは、主に麻薬取引を通じてバルカンとの関係を深めた。この取引でビン・ラディンのパートナーを務めたのが、コソボ・アルバニア系住民の独立を求めたコソボ解放軍(KLA)であった。KLAはタリバン支配下のアフガンで生産された麻薬を、欧州市場で売りさばいて荒稼ぎしていた。 九〇年代後半、クリントン米政権は、ユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領(当時)を打倒するという政治目的のため、KLAをパートナーに選び、軍事訓練を施す一方、彼らの麻薬取引は黙認した。このアメリカの政策が、ビン・ラディンとKLAのバルカンにおける勢力を急激に膨張させてしまう。八〇年代のアフガン戦争時、米国はソ連と戦うイスラム義勇兵を支援する資金を捻出するため、ISIが行なっていた麻薬取引には目を瞑ったが、それと全く同じ構図である。

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