インドネシア 反米デモはなぜ減ったか

執筆者:田畑昭 2001年11月号
カテゴリ: 国際

 世界最大のムスリム国家インドネシアは、約二億一千万人の人口のうち九割近くをイスラム教徒が占める。反テロ戦争をきっかけに(1)政治におけるイスラム勢力の発言力増大、(2)民族自決と外国排除意識の高まりによる一層の政情不安、(3)自由アチェ運動などイスラム武装組織と国際ネットワークの連帯――といった懸念が出始めている。 メガワティ大統領がマホメット昇天祭の前夜(十月十四日)、イスラム教徒の集まるインドネシア最大のモスクで、「個人であろうが政府であろうが、犯人を捜すという理由で他の人々や他国を攻撃することは容認できない」と述べたのは、国内のイスラム教徒およびイスラム政治勢力に配慮した結果に他ならない。メガワティ大統領はテロ発生後、イスラム教が中心の国の首脳としては最初にブッシュ米大統領と会談、反テロで米国と共同歩調を取る姿勢を示した。だが、アクバル・タンジュン国会議長が「犠牲者が増えないよう政府は米国に注文すべきだ」と述べるなど、空爆に反対する意見が国内で高まったため、先の「容認できない」発言につながったのである。 有力イスラム系政党の党首は「インドネシアの立場が明確になった」と、自分たちの意を汲んだ発言だったことを評価。何より、この発言を境に、米国大使館前での反米デモが極端に減ったことが象徴的だ。インドネシアのデモ参加者の多くは日当を受け取って動員されており、デモの陰には常に仕掛け人がいるというのは半ば常識。イスラム教徒が大統領の発言を「勝ち取った」とも言えるわけだ。

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