クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

諸悪の根元・中東に一条の光

執筆者:徳岡孝夫 2002年4月号
エリア: 中東

 中東の和平は、われわれが生きているうちには成らないだろう。ユダヤvs.パレスチナの抗争は、全世界を破滅へ引きずり込むブラックホールかもしれない。このコラムで、何度もそう書いてきた。 初めてそういう終末観めいたものを抱いたのは三十年前、ところはテルアビブである。一九七二年は暗い事件の多い、人を悲観的にする年だった。 私は浅間山荘落城の当日は東京に戻っていたが、あれは無茶苦茶に寒い軽井沢だった。続く妙義・榛名の連合赤軍事件の現場にも、風花が舞っていた。そして同年五月三十日のテルアビブ空港襲撃事件。直後に現地に着いた私を見る、空港警備員の顔がこわばっていた。さらに、生き残った岡本公三の軍事裁判。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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