大学改革で後手に回った文科省の焦り

執筆者:加古陽治 2002年5月号
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

「国立大学の長い歴史の中で、今回の報告は画期的な内容だと思います」 今年三月九日、遠山敦子文部科学相は、閣議後の会見に集まった記者を前に、国立大学の法人化の枠組みを検討した識者会議の報告書を自画自賛した。報告の柱は、法人化とともに、学長のリーダーシップを強化すること、第三者評価で目標達成度を評価し予算配分に生かすことなど。教職員は国家公務員ではなく「非公務員」とされ、兼職・兼業が容易になるし、実績により待遇を良くすることも可能だ。外国人でも学長に就任できるようになる。 それは当の文科省の担当者ですら、少し前までは考えてもいないことだった。一部では依然として反対の声はあるものの、識者会議が検討を進めていた一年八カ月の間に大学行政をめぐる環境は大きく変化したと言えるだろう。 現在、大学行政では経済産業省的な考え方が文部科学省的な考え方を浸食してきている。バブル崩壊後、即戦力を求める企業は入社後に社員を鍛える従来型の採用を見直してきた。また、研究開発でも大学との連携を強く意識するようになっている。昨年四月に非公務員型の独立行政法人となった経済産業研究所は法人化以前から大学改革を研究テーマに掲げ、同年二月には青木昌彦所長らが『大学改革――課題と争点』(東洋経済新報社刊)を出版。「産業競争力の強化」という視点から大学改革を提言した。産業界が満足できる改革案を提示しない文科省への「挑戦状」である。

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