メジャーリーグの時限爆弾

執筆者:生島淳 2002年5月号
カテゴリ: スポーツ

 石井一久がメジャーリーガーとして初めてマウンドに上がった日、アメリカの放送局HBOでは、人気スポーツキャスターのボブ・コスタスがメジャーリーグ(MLB)のコミッショナー、バド・セリグにインタビューをしていた。 球団削減問題、そして労使協定の締結問題。現在のMLBの状況をどう捉えているのか、という質問にコミッショナーはこう答えた。「我々はシステム変革のための九回裏の攻防に入っている」 MLBは時限爆弾を抱えている。特に問題となるのは、昨年失効した労使協定の締結。前回の交渉時にはオーナー側、選手会側の感情論が先行、九四年は八月の段階でストライキ、ロックアウトの応酬となり、ワールドシリーズが行われないという異常事態になった。九五年は開幕がずれ込んだが、この年、野茂英雄が海を渡り「トルネード旋風」を巻き起こして、人気回復の一助になった。 今回の交渉も昨年九月十日の時点までは難航が予想されていた。しかし「9.11」が状況を変えた。 テキサス・レンジャーズの元オーナーでもあったブッシュ大統領は、スポーツがプレーされることこそ、アメリカに「普通の生活」が戻って来た象徴になると考えた。 こうなっては、労使交渉でお互いのエゴをぶつけ合っている場合ではない。実は今季のMLBは、労使協定の締結を棚上げした状態で行われている。

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執筆者プロフィール
生島淳 1967年生れ。広告代理店勤務を経て93年よりライターとして活躍。著書に『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)など。
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