国際論壇レビュー

米欧を裂く「反ユダヤ主義」

 アラファト議長の軟禁状態は終わり、徐々に中東和平に向けた動きが出てきてはいるが、依然としてパレスチナとイスラエルの深刻な状態は変わらない。外交努力は継続しているが、楽観は許されない。この中東情勢の急速な悪化の過程で生じた一つの憂慮すべき事態は、アメリカとヨーロッパの間にみられる見解の相違である。フランスの大統領選挙は、結局シラク大統領の再選ということで決着したが、第一回目の投票でルペン候補が大きく得票を伸ばしたこともこれに影響を与えていた。 筆者にとって最も憂鬱であったのは、中東問題をきっかけにアメリカとヨーロッパの間で再び「反ユダヤ主義」のテーマで議論が起こったことであった。はっきりと問題提起をしたのは『ニューヨーク・タイムズ』紙の社説であった。「ヨーロッパにおける最近の反ユダヤ主義の行為は、ホロコースト六十年後の今日、ホロコーストを生み出した悪意にみちた嫌悪感情が復活しているのではないかと懸念させる」と指摘した(“Anti-Semitism in Europe”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、四月二十二日)。

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