大国が注視 核開発へ走るミャンマー

執筆者:竹田いさみ 2002年7月号
エリア: アジア

 民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー氏が五月六日、一年七カ月ぶりに自宅軟禁を解除され、ミャンマーは民主化に向けて第一歩を踏み出した。スー・チー氏の解放交渉は、ラザリ・イスマイル国連特使が仲介し、ミャンマー軍事政権とスー・チー氏の対話を促進、信頼醸成を積み重ねた末に、政治的妥協の産物として実現した。対話は二〇〇〇年十月に開始されたが、同特使がヤンゴンを七回訪問するなど、合意への道のりは決して平坦ではなかった。 実は、この対話プロセスとほぼ同時期に、ミャンマー軍事政権はロシア政府との間で、原子力開発に関する秘密交渉を進めていた。これは日本政府が軍事政権に対して、バルーチャン水力発電所改修のために、人道援助を検討していた時期とも重なる。さらに、中国との間で経済協力協定の締結が模索されるなど、スー・チー氏解放交渉の時期に、水面下ではさまざまな動きが交差していた点を見逃してはならない。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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