「隠れIT企業」JR東日本の地力に注目したい

2002年8月号

 大概が面白くない通勤風景に少しだけ小気味いいテンポを与えてくれるのが、昨年十一月、東日本旅客鉄道(JR東日本)の東京近郊区間で運用が開始された非接触型ICを搭載したプリペイドカード・定期券「スイカ(Suica)」である。 自動改札機に券をくぐらせることなく使えるため便利なこときわまりない。販売開始から六カ月で発行四百万枚を突破、非接触型ICを利用したカードの運用例としては世界最大規模になると見込まれる。このスイカ、IC自体を開発したのはソニーだが、カード内の無線技術などはJR東日本の独自技術でまかなっている。 JR東日本の連結売上高二兆五千億円超は、東京急行電鉄、東武鉄道、小田急電鉄の関東私鉄三社の連結売上高の合計(二兆四千億円)を上回る。関西でも近畿日本鉄道、阪急電鉄など五社合計(二兆三千四百億円)を超える金額だ。この資本力を武器に同社が生み出す技術には、鉄道業界を変える可能性を秘めているものも多い。 同社はスイカのICチップを携帯電話に搭載できるよう、NTTドコモ、KDDI、J-フォンの三社と交渉中。新幹線などの指定席券をJRの予約端末からダウンロードし、携帯電話を自動改札機にかざすだけで入出場できるようになる。「モバイル(携帯)スイカ」は二〇〇四年度から二〇〇五年度にかけて登場する予定だ。実現すると、駅構内の「みどりの窓口」は順次、削減対象になる。消費者自らがJRの予約端末にアクセスし、発券情報をダウンロードするのだから、駅に何台も端末を並べ、駅員を多数配置せずに済む。消費者にとっても、連休前などの混雑時に長蛇の列をつくらなくてもよくなるメリットがある。

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