米国がパレスチナ問題で身動きできない理由

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2002年8月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: 中東 北米

ブッシュ大統領の「中東演説」は、なぜあそこまでイスラエル寄りになったのか。中間選挙を秋に控え、政権を縛るユダヤロビーとキリスト教保守派の強大な影響力を検証する。[ワシントン発]四月十五日、雲ひとつない青空の下、米議会前で開かれたイスラエル支援集会に集まった数万人の中には、上下両院議員を含む強大な「ユダヤロビー」の著名人が顔を揃えていた。さらに目を引いたのは、ブッシュ大統領の支持母体であるキリスト教保守派の面々が列席していたことだ。 壇上に登ったネタニヤフ元イスラエル首相がパレスチナの自爆テロを非難し、イスラエルの報復攻撃を擁護すると、会場からは割れんばかりの大歓声があがった。だが、ウルフォウィッツ国防副長官が政府代表として演説に立つと空気は変化した。ウルフォウィッツは、ブッシュ政権の慎重な人選の結果だった。彼はユダヤ人であり、タカ派として知られる。その彼が自爆テロを非難する一方で、パレスチナ側にもいくらかの理があると語ったのだ。会場は一転して、野次とブーイングの嵐となった。 この光景こそが、六月二十四日にブッシュ大統領が行なった「中東演説」の背景を何よりも雄弁に物語っている。『エルサレム・ポスト』紙のデイビッド・ホロウィッツ特派員は、ブッシュ演説を「まるでシャロン(イスラエル首相)が書いたようだ」と評した。実際、ブッシュはパレスチナ人に対し、パレスチナ国家樹立とアメリカの支援を望むならば、PLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長に代えて「テロに屈しない」指導者を選べと命じ、その一方で、イスラエルに対してはパレスチナ自治区の再占領を少しばかり批判し、「武力衝突が収まったら」「無実のパレスチナ人」の自由往来を確保するよう求めただけだった。

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執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
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