米国通信業界が迎えた勝者なき「過当競争の果て」

2002年10月号
カテゴリ: IT・メディア 国際
エリア: 北米

相次ぐ企業不祥事の背景にあるのは、経営者のモラル・ハザードだけではない。バブル時代の通信各社は、つまり儲からなかったのだ。歪んだ競争の代償は――。 七月十日、米サウスカロライナ州で開かれた米最大の長距離通信会社AT&Tの株主総会。七百億ドル超のケーブルテレビ(CATV)部門売却の正式決定ばかりが注目を集めたが、AT&Tの苦境を象徴するもう一つの案件がひっそりと株主の承認を得た。「まるで破綻間際のドットコム企業だ」。ある株主があきれるのは、AT&Tが五株を一株に併合することを決めたからだ。成長企業が利益還元のために株式を分割するのは珍しくないが、AT&Tの株主は保有株式数が表面的には大幅に減る。もちろん五株を一株にくくり直すだけだから、株主は損をせずAT&Tも直接の利益を得られる訳ではない。なぜ、煩雑な事務手続きを覚悟で併合するのか。ずばり、株価の底割れ回避が狙いだ。 AT&Tの現在の株価は十二ドル二十セント(九月六日終値)と一九八四年の分割で新生AT&Tが誕生して以来の安値圏で推移している。しかも、成長分野のCATV部門の売却で長距離通信専業になれば企業価値は大幅に減少、株価の五ドル割れは避けられない。米国で五ドル未満の銘柄を相手にする機関投資家は少ない。そこで五株を一株に併合すれば、株価が五倍になるはずとの皮算用だ。

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