インテリジェンス・ナウ
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北朝鮮は「ジキルとハイド」――CIA文書から北の手法を分析する

春名幹男
執筆者:春名幹男 2002年11月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米 朝鮮半島

CIAは長年にわたって北朝鮮の手法を徹底的に分析し、工作員も割り出してきた。日本もそのやり方に倣い、もう一度、調査を重ね情報を洗い直す必要がある。 青白く緊張した面持ちでじっと正面を見据える小泉純一郎首相。その向かい側で首相の目を見るでもなく、左右をきょろきょろ見回す血色の良い北朝鮮の金正日総書記。そして、その右隣りで薄笑いを浮かべる浅黒い姜錫柱第一外務次官――平壌からの中継で放映された日朝首脳の表情はあまりにも対照的だった。 まさにあの映像が日朝首脳会談の真実を雄弁に物語っていた。当初から厳しい顔つきで「実務訪問」に臨むと決めてはいたが、衝撃的事実を知らされてよけいに強く口をへの字に結んだ小泉首相。これで日朝正常化交渉は再開できるかな、と様子をうかがう金総書記といった図である。実は小泉首相、二年前、米クリントン政権のオルブライト国務長官が訪朝した際に毅然とした態度を示さず軟弱と批判された教訓を米側から教わり、学んだ演出だったのだ。 そしてその日の午後、鉄砲水のように溢れ出た拉致事件の衝撃的情報と、拉致被害者家族の涙と怒り、沸騰する世論。制御不能の大転回で外務省も官邸も、危機管理の基本動作などどこへやら、パニック状態に陥った。外務省はまずい対応で批判の矢面に立たされ、日本では情報の“筋”は忘れられたかに見えた。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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