「ITの時代」を見抜いた管理会計の伝道者 櫻井通晴(専修大学教授)

執筆者:船木春仁 2002年11月号

 銀行業務は大変に緻密で厳格なものである。では、経営も緻密で厳格かと言えばそうではない。むしろ銀行の経営は、他のどのような業種の経営よりも「ザル」「ドンブリ勘定」であった。 こういうことだ。 護送船団方式で守られてきた時代には、黒字でも赤字でも大蔵省(現・財務省)に守られてきた。だからこそ、コストと活動の関係について合理的な評価を行なうことは少なく、ひたすら支店単位、事業部単位の売上高(業務収益)だけが問題にされてきた。多額の広告宣伝費を投じている新商品を役員が顧客を訪問して売った場合と、既存商品を新人行員が窓口で売った場合とでは、どちらに多くのコストがかかっているかは誰の目にも明らかだ。だが、業務収益至上主義ではコストは問題にされない。製造業の現場では一銭単位でのコスト削減が求められている時代に、銀行は外に言うほどには自らの業務コストを意識した経営はしてこなかったのだ。 しかし自由化時代を迎えて高コスト体質では生き残れない。そのために今、銀行業界では業務作業を見直して改善を進める活動が静かに広がっている。その活動は、ABC(Activity Based Costing=活動基準原価計算)と呼ばれる手法を取り入れたものだ。ABCはすでに富士、東京三菱、あさひ、滋賀、肥後(行名は導入当時)など、日本全国の銀行で導入されている。

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