国際論壇レビュー

「ヨーロッパ」はどこまで拡大するか

 イラクに関する国連安保理決議が全会一致で可決され、査察が開始された。イラクの国連に対する申告書類もとりあえず期限どおり提出され、その内容が精査されている。はたしてイラクへの攻撃は不必要になるのか。国際社会は、固唾をのんで見守っているというのが、現状である。しかし、その間何も重要なことが起きていないわけではない。静かにではあるが、ヨーロッパにおいては、二重の拡大とでもいうべき、さらなる変質の動きが起きている。NATO(北大西洋条約機構)の拡大とEU(欧州連合)の拡大である。     * 十一月下旬、プラハで行なわれたNATO首脳会議で、中東欧の七カ国の新規加盟が決定された。冷戦時代を知るものにとっては、感慨無量といったところである。『ワシントン・ポスト』紙社説は、こう書き始める。「一九八九年の流血の革命によって、ニコラエ・チャウシェスクと彼の妻が処刑されたとき、ルーマニアがやがてちゃんとした民主主義になるなどと期待する者はほとんどいなかった。隣国のブルガリアといえば、西欧の多くの首都で暗殺計画を企んだ秘密警察を持ち、法王の暗殺までねらったといわれていたが、同国の未来にも期待は持たれなかった。リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国は、そもそも生き残れるかどうかが疑問視されていた。ソ連が解体したとき、この三国には、近代になって以来独立国としての希望の持てる歴史はほとんど存在しなかった。これらすべての国が、スロバキアとスロベニアとともに、北大西洋条約機構の加盟国として迎えられようとしている。驚くべきことでもあり、祝福すべきことでもある」(“Successes for NATO”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』(IHT)、十一月二十二日)。

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