コンピュータの中で眠っていた男

執筆者:成毛眞 2003年1月号
タグ: 中国 日本

 忘年会、新年会のシーズンである。僕のいたソフトウェア業界は平均年齢が若いからか、じつに派手な忘年会をしていた。派手といってもゴージャスという意味ではない。すこしお金のかかった学生コンパという意味合いだ。 十五年近く前の納会のことだ。午後四時くらいから社内で酒盛りが始まり、数時間後には自席でビールや氷のぶっ掛けあいという始末。プロ野球日本シリーズの優勝チームのようなノリである。 ビニールシートで保護してあったものの、商売道具のパソコンは水浸し。気がついてみれば、数十台が作動不能である。宴会はさらにエスカレートし、中国の取引先からいただいた老酒の四斗樽をひっくり返したからたまらない。老酒はフリーアクセスのフロアに染み込み、LANの回線をショートさせ、その臭気は正月明けにフロアを総入れ替えするまでおさまらなかった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
成毛眞(なるけまこと) 中央大学卒業後、自動車部品メーカー、株式会社アスキーなどを経て、1986年、マイクロソフト株式会社に入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。2011年、書評サイト「HONZ」を開設。元早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に『面白い本』(岩波新書)、『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)、『これが「買い」だ 私のキュレーション術』(新潮社)、『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『金のなる人 お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』(ポプラ社)など多数。(写真©岡倉禎志)。
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