「水」をめぐるシンガポールとマレーシアの激しい駆け引きは、新たな展開を迎えた。シンガポールの再生水製造プラントが、両国の包括的な交渉の行方を左右する可能性も出てきた。[シンガポール発]森の中、清流にたたずむ野生のシカが、突然流れに「放尿」する。その流れは、川を下り、排水溝を抜けるたびにゴミや廃棄物が混じり、見るからに汚れた水へと姿を変えていく。そして、ミネラルウォーターの工場の場面が現れ、流れるような生産ラインが続く――これは、シンガポールで九月下旬に公開されたジャッキー・チェン主演のハリウッド映画「ザ・タキシード」の冒頭部分である。その後の展開は映画を実際に見てもらうとして、シンガポール国民がこの冒頭シーンを複雑な思いで見たことは疑う余地がない。というのも、シンガポールの人々にとって、今、「水」が最大の関心の的であるからだ。
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