ハンガリーを特徴づける「欧亜両性」のイメージ

執筆者:浅井信雄 2003年2月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: ヨーロッパ

 昨年のノーベル文学賞を受賞したハンガリーの作家、イムレ・ケルテースはユダヤ系であり、ナチス・ドイツのアウシュビッツ収容所での生活体験をテーマに作品を書き続けている。 ハンガリーにはユダヤ系以外にも少数民族は多いのだが、ナチスの主としてユダヤ系とロマ(ジプシー)への迫害ゆえに、近代ハンガリーの権力交代の狭間にあって、とくにユダヤ系が数奇な運命に翻弄された事実がある。冷戦崩壊後、東欧のユダヤ問題に光をあてる欧州文芸界の新潮流が受賞に結実したようだ。 ハンガリーの民族構成はそれほど複雑ではない。米国中央情報局(CIA)の二〇〇二年七月現在の推定で、総人口は一〇〇七万五〇三四人、民族別内訳はハンガリー系八九・九%、ロマ系四%、ドイツ系二・六%、セルビア系二%、スロバキア系〇・八%、ルーマニア系〇・七%などのほか、ユダヤ系、クロアチア系も少数いる。ユダヤ系はナチスの迫害や国外移住で減り約五万人に過ぎない。 言語面でもハンガリー語を母語とする者が九八・二%だ。つまりハンガリー系主導の同質性が高い国民であって、少数民族は政治力を発揮しにくく、国内で民族問題が深刻化する状況にはない。 実はハンガリーとは英語の国名だが民族や人種の名ではなく、ハンガリーの多数派住民はマジャール人と自称し、使用言語をマジャール語と呼ぶ。そこにハンガリーの特異な歴史が浮かんでくる。

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