AOLタイム・ワーナーというユーフォリア

執筆者:喜文康隆 2003年3月号

「期待に対して金を払い、期待が裏ぎられることもありうるという点では、情報産業は基本的な点で宝くじに似ている」(梅棹忠夫『情報の文明学』)     * 九百八十七億ドル。日本円に換算すると十二兆円に迫る前代未聞の巨額の赤字を、AOLタイム・ワーナー(以下AOL)が二〇〇二年決算で計上した。 合併構想が浮上してから三年、実際の合併から二年、AOLの盛衰は、IT社会の未来、米国のメディア寡占、金融市場における株価至上主義など、資本主義社会のさまざまな問題を提起している。これはエンロン問題に端を発した、一連の会計不信以上に裾野の広いテーマである。 十二兆円に迫る巨額の赤字が発生したのは、バランスシート上に計上した「営業権(のれん代)」の償却不足が直接の原因である。時価会計主義の徹底による会計処理の変更がそれに追い打ちをかけた。合併直前のAOLの株式時価総額は千九百億ドル、そしてタイム・ワーナーの時価総額は千六百億ドルに達していた。それが直近の二〇〇三年一月末には、合併会社全体として五百億ドル強にまで縮小している。 合併時の株式交換による株式数の減少はある程度考慮にいれなければならないものの、単純計算すれば株式の価値は七分の一にまで減少したことになる。要するに、メディア革命を支配するといわれたAOLの営業権・ブランド力の実態は、右肩あがりの高株価が支えていたにすぎないということである。

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