シュレーダー首相の危険極まる“賭け”

2003年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

[ベルリン発]ドイツが冷戦終結時以来の注目を浴びている。戦後の連邦共和国発足以来、日本同様、米国に歩調を合わせる外交を続けてきたにもかかわらず、今、イラク危機をめぐって公然と米国に反旗を翻しているからだ。「イラク攻撃反対」姿勢を最も早く鮮明にし、一時は孤立化が懸念されたが、今では、フランス、ロシアを含めた「反戦連合」の旗手のようにさえ映る。イラクが許容射程を超えたミサイルの廃棄にとりあえず応じ、トルコ国会が対イラク戦に備えた米軍の駐留を拒否するなど、「反戦連合」の旗色も悪くはない。 歴史的とも言えるドイツの転換は、一九九八年秋以来、社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権を率いるシュレーダー首相の政治手法によるところが大きい。伝統的社民主義の理念にも、ナチス・ドイツの過去ゆえの制約にも縛られず、世論の流れを見極めながら、右に左にと舵をきる――。だが、外交まで、その大衆迎合主義的手法に委ねると、ドイツは修復不可能な傷を負う危険性がある。 首相が「米国が対イラク攻撃を決めても、兵も資金も出さない」と宣言したのは、自身の再選をかけた総選挙が翌月に迫った昨年八月だった。それは「劣勢挽回の切り札」(ツァイト紙)であり、実際、有権者の心をつかんだ。保守勢力、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の宰相候補、シュトイバー・バイエルン州首相は立場を明確にせず、支持率で七%以上あったそれまでのリードをあっという間に失った。

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