クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

新幹線が、もし韓国にあったら

執筆者:徳岡孝夫 2003年4月号
エリア: アジア

 横浜の南郊、我が家に近いJRの駅は、根岸線の終点である大船駅から二つ目である。六分か七分で着く。それなのに乗ると、早くもぐっすり眠っている女の子がいる。しかも朝である。電車通学の女子高校生らしいが、オカッパの髪を顔の両側にスダレのように垂らし、熟睡している。夜ごと入眠に苦労する私は、揺り起して眠るコツを聞きたい誘惑に駆られる。 山陽新幹線「ひかり」の運転士(三三)が居眠りしたのは午後三時三分に福山駅を出た数分後からで、三時二十一分に岡山駅に着くまで眠り、運転室に入ってきた車掌に起されてやっと目が覚めた。新幹線が脱線転覆すれば、阿鼻叫喚の地獄になったところだった。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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