行き詰まる隣国イラン「イラク後」のシナリオ

執筆者:高橋和夫 2003年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 イラク戦争がイランを激しく動揺させている。国内の主導権争いを続ける保守派も改革派も、共に自国の今後を占う戦争の行方を固唾を呑んで見守っていた。 そもそもイランの国民感情として、イラクのフセイン政権が倒れること自体に抵抗はない。湾岸戦争によって大部分が失われたとはいえ、残存するイラクの軍備はイランにとって大きな脅威だったからだ。またイランはイラクが大量破壊兵器や長距離ミサイルを保有しているとの疑いを持ち続けてきた。それゆえ、イラクのフセイン政権が今回の戦争によって転覆したことが、イランの安全保障上大きなメリットになることは間違いない。 しかしフセイン政権の倒壊は、同時にイランの現体制を不安定化させる要因でもある。不安定化の過程を段階的に見てみる。第一段階はイラクに親米政権が誕生すること。すでにアラビア半島諸国のカタールやサウジアラビアなどには米軍が展開しているだけでなく、イラクの北側に位置する旧ソ連・アゼルバイジャン共和国はやはりアメリカ寄りである。そして東側のアフガニスタンにはカルザイ政権が存在する。つまりイランにとって、イラクだけが米国の息のかかっていない隣国だった。しかし、ここに親米政権が誕生すれば、イランは周囲を完全に米国寄りの国家に包囲されてしまうのである。

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