【インタビュー】マハティール・モハマド(マレーシア首相) イラク戦争によって世界の構造は一変した

執筆者:加藤暁子 2003年6月号
カテゴリ: 国際

イラク戦争をイスラム世界はどう見ていたのか。非公式に来日中だった東南アジアを代表する指導者に聞いた。そこには米国とは全く異なる見解と論理があった。――イラク戦争にあたって、米国は結局、新たな国連決議を得ませんでした。マハティール 最悪の事態だ。世界唯一の超大国が国連や世界秩序にまったく敬意を払わなければ、世界中が恐怖を抱くことになる。他国への進攻や戦争が米国の利益だけで決定されたことで、国際関係や世界の構造自体が一変してしまった。強力な国家に脅されたとき、その国はいかなる要求もできなくなる。これがイラク戦争が私たちに突きつけたことだ。 もちろん戦争は近代文明にとって許されざることだ。国の政策を遂行するために人々を殺す行為はまったく原始的、非文明的といえる。国家間の問題解決に戦争という野蛮な手段を使う事態に、私たちはいまだ直面している。――米国の同時多発テロ事件を契機に、ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を宣言し、アフガニスタン攻撃も今回のイラク攻撃も対テロ戦争と基本的に位置付けていますが。マハティール この戦争はテロとはまったく関係がない。アフガニスタン進攻とイラク戦争のいずれも米国にとって軍事力と技術的な優位性を世界に見せつけることに他ならない。米軍兵に比べ、イラクでいかに多くの人命が奪われたことか。これは世界への警告だ。テロの撲滅などではない。何が起きたかは私たちが実際に見た通りだ。もし我々に危害を加えれば、あなただけでなく、家族も家も町や村も、そして国さえ滅ぼすことができる。これは力のある国家がことの善悪まで支配できるということだ。

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