イラク人が求めるアメリカの「正義」とは何か

執筆者:池内恵 2003年6月号
エリア: 中東 北米

四月九日、巨大なフセイン像が引き倒された。世界に放送されたこの光景は、アラブ世界を大きく揺るがした。アメリカ、力、正義をキーワードに、新進気鋭のアラブ専門家がフセイン後の中東世界を分析する。 イラク戦争が終った。しかし、開戦から日本で流れた膨大な報道や論評の中で、意外にも薄弱だったのは、イラクという国、そこに住むイラク人の視点ではないだろうか。何も「民衆の視点からこの戦争の惨禍を直視しろ」などと言うつもりはない。この戦争はあくまで「イラク問題」をめぐる「イラク戦争」である。ところが日本の報道では、それがあたかも全て「アメリカ問題」であって「アメリカの戦争」であるかのように伝えられていたのではないか。イラクの戦後復興へ適切に取り組むためにも、イラク人がこの戦争にどう対応したか、フセイン政権の重石が取れた現在何を考えているか、把握しておかなければならない。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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