「空洞化」が浮彫りになった日本の感染症対策

2003年7月号
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

ウイルス検査に最先端の技術を持ちながらSARS用の製品開発が遅れる現実。製薬業界はリスクを嫌い、有効な治療薬を探すことにも消極的だった。産官学連携の欠如と人材育成を怠ってきたツケを、どう解決していくか――。 新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の感染拡大の勢いは衰えたが、このまま病気が消えてなくなると考える専門家は少ない。冬に猛威を振るうインフルエンザと同じように、SARSもまた、今秋にも再流行するかもしれない。「日本は大丈夫」と安心するのはまだ早い。それどころか、大騒ぎしたわりに国内の治療薬や検査薬開発、患者発生を想定した対応策はおぼつかない。備えは決して十分とはいえないのが実情だ。「これは炭疽菌テロ危機の再来だ」――。SARS拡大で米政府にはテロの緊張が走った。米国にはもともと、天然痘ウイルスなどを使ったバイオテロに対する詳細なシミュレーション研究や州レベルのマニュアルがある。それでも、二〇〇一年に起きた炭疽菌テロ騒ぎでは政府の指揮命令系統はうまく機能せず、現場は混乱した。この時の教訓がSARS対策に生かされている。ある一つの感染症への対策、という枠を超えて、まさに国家安全保障の一環として対策が進められているのだ。

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