【インタビュー】曾野綾子(作家・日本財団会長) 荒野で生れた「アラブの格言」

2003年7月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 海の向こうからいいものが来たことはない――これは、先ごろ刊行した『アラブの格言』(新潮新書、五月刊)に収録した言葉の一つです。アラブの地と異なり、日本は四方を海に囲まれているから、来るものは悪しきことばかりではもちろんありません。しかし、たとえば日本の海域にはずっと不審な船が往来していた訳で、一昨年十二月に海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末に自爆沈没した船は、武装した北朝鮮の「工作船」で、今度その仕様や武器が明らかになりました。 今、東京の「船の科学館」で、大変な苦労の末に九十メートルの海底から引き揚げられた「工作船」とその銃器類千点余りを展示していますが(九月三十日まで)、あらためて海の向こうの北朝鮮という国家の存在を実感します。 錆びた鉄船の前に私は百合の花を捧げさせて頂きました。鉄船は理不尽な国家とその破壊の象徴なのですが、そこには死者への悲しみもあるべきだと思ったからです。憎しみだけでなく、悲しみがあって初めて、次の段階で意味あるものを生み出すと思うからです。 人間の感情というのは、そのように複雑なものではないでしょうか。そういう意味では、今度まとめた『アラブの格言』には、人間の本質を言い当て、私たち日本人にも役に立つ知恵と言葉がたくさんあると思います。砂漠に生きる人々から、私は笑いながら学んだ気がします。笑って学べるって、いいことですよ。ともかく、感心するのはその率直さですね。

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