アメリカ現代「お犬様」事情

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2003年10月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

犬用キャンプから犬用温泉、抗鬱剤を処方される犬……犬の「人扱い」はとどまるところを知らず――。そして日本も、遠からずこうなるのかも。[ワシントン発]英語で「まるで犬の暮らしだ」といえば、従来は、惨めな生活を意味した。だが二十一世紀のアメリカでは、この定義は当てはまらない。 現在、アメリカの犬たちは、飼い主の実の子のように溺愛されている。とりわけ、子育てが終わったベビーブーム世代の可愛がりようは半端ではない。犬たちには、惨めな生活どころか、キャンプや温泉までが用意されている。飼い主たちは、犬の心を知りたいと「犬読心術」にすがり、犬が鬱病にかかったと騒いでは、人間用の抗鬱剤「プロザック」を与える始末。さらには、犬の法的身分を人の「所有物」から格上げし、飼い主は所有者ならぬ犬の「保護者」にすべきだという運動まで繰り広げている。 こうした傾向に、国内からも疑問の声があがり始めた。たとえば、作家のジョン・カッツは、初夏に出版された『犬の新しい仕事』という本の中で、こう指摘している。「癌の告知を受けた人の精神的打撃を和らげる」など、犬に期待される役割はあまりに広がり過ぎているのではないかと。 この本は、一時的には、アメリカ人に犬との関係の再考を迫ったかもしれないが、その影響力はたちまち雲散霧消してしまった。作者自身が認めるように、愛犬家たちの信念が勝ったのである。つまり、「人と同じように、犬にも満足が必要だ」という考え方だ。

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執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
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