【インタビュー】榊原清則(慶應義塾大学総合政策学部教授) 企業はまだ日本の大学を評価していない

執筆者:船木春仁 2003年11月号
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

――このところ日本は産学連携ブームですが、産業史の視点でみると、産学連携による産業力強化にはどのような背景があるとお考えですか。榊原 二十世紀半ば以降、産業界は三つの大きな流れに遭遇しています。リニアモデルの破綻、サイエンス直結型産業の増加、そしてシリコンバレーモデルの登場です。 リニアモデルとは、研究から開発、設計、生産、販売へと直線的(リニア)に進むビジネスモデルで、二十世紀の産業を規定する重要なビジネスモデルです。それを支えたのが企業が独自に抱える研究施設でした。十九世紀半ばに、企業として初めて自社研究所を開設したのはドイツの化学産業で、この分野は川上の基礎研究成果がそのまま川下の商品(成果物)に結びつき易く、イノベーション効果も大きかった。これがアメリカにも波及して自己完結型のビジネスモデルの基盤となりました。 ところが、一世紀を経た一九五〇年代以降、産業は先端サイエンスの成果と直結しないと競争力を保てなくなる「サイエンス・ドリブン」(科学主導)の傾向を強めます。その結果、企業内研究所では研究成果を上げても私的利益につながらず、投資合理性を問う議論が高まったのです。同時に、サイエンス・ドリブンになるのであれば、純然たる研究機関である大学と連携を深めたほうが良い、という発想も生まれました。それが象徴的に現れたのが、八〇年代にアメリカで相次いで起きた自社研究所の閉鎖です。

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