ユニバーサルデザイン 鯖江市・町ぐるみのデザイン戦略

執筆者:水木楊 2003年12月号
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

 福井県の鯖江市は人口約六万七千人。冬が訪れると、道も凍り、積雪一メートルになることもある。厳しい自然環境に囲まれた北陸の町だ。 二〇〇三年四月、この町の市役所に日本で初めて「ユニバーサルデザイン課」なる部署が誕生した。 ユニバーサルデザインとは、ただスタイルの良い商品を作るということではない。同市の定義によれば、「すべての人々が幸福になるために創意工夫すること」であり、誰でも安心して暮らせる街を築くという意味を持っている。つまり、最初からあらゆる人(=ユニバーサル)が使えるよう物事を具体化(=デザイン)することなのだ。 市内の中央にある「めがね会館」六階。毎週土曜の午後七時、十数名の社会人が急ぎ足で集まってくる。「SSID」(Sabae School of Intelligent Design)の生徒たちである。授業は夜の十二時までびっしりと続き、講師と生徒との間の議論がはずんで午前二時を過ぎることすらある。のみならず生徒の何人かは日曜日も自主的に教室にやってきて宿題に取り組む。受講期間は一年間だ。 デザインはコンピュータを使う。といっても、最初は鉛筆で線を引いて自分のアイディアを絵柄にすることから始まる。だから、講義は鉛筆の削り方から始める。頭の中にある概念を具体的な形にするには、言葉の意味を正確に知らなければならない。生徒にみな辞書を持たせ、「考える」と「思う」や、「作る」と「創る」「造る」の違いを基礎から分らせる。そのうえで、デッサン、色彩論、イラスト、プレゼンテーション、企画書の書き方などを徹底して叩き込む。募集人員は二十五名だが、そのうち十人近くはあまりの厳しさに脱落していく。

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