イラク情勢が思わしくない。米軍のみならず、国連や赤十字、そしてイラク人を標的にするテロが相次ぐ。ベトナム戦争中、戦死者のニュースが毎日流されたのと、似た状況である。むろん客観的には、米軍がイラクに侵攻してから半年ちょっと、戦死者の数も百人単位であって、約六万人が命を落としたベトナム戦争とは、比較にもならない。けれどもこうした状況が続くと、一部の人が「泥沼化」と言い出しても不思議ではない。 イラクの情勢を、どのように考えるべきなのか。昨年九月ワシントンの在米大使館に赴任して以来、政権内外のさまざまな人と意見を交換した。メディアで展開される議論に耳を傾けた。そのうえで強く感じるのは、いまイラクで起こっているのは、アメリカが世界といかに関わっていくかという、新しい戦略の確立と実行についての、試行錯誤の一部だということである。
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