【ブックハンティング・スペシャル】 本当のアメリカを歴史の中から考える

執筆者:阿川尚之 2003年12月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史 書評
エリア: 北米

 イラク情勢が思わしくない。米軍のみならず、国連や赤十字、そしてイラク人を標的にするテロが相次ぐ。ベトナム戦争中、戦死者のニュースが毎日流されたのと、似た状況である。むろん客観的には、米軍がイラクに侵攻してから半年ちょっと、戦死者の数も百人単位であって、約六万人が命を落としたベトナム戦争とは、比較にもならない。けれどもこうした状況が続くと、一部の人が「泥沼化」と言い出しても不思議ではない。 イラクの情勢を、どのように考えるべきなのか。昨年九月ワシントンの在米大使館に赴任して以来、政権内外のさまざまな人と意見を交換した。メディアで展開される議論に耳を傾けた。そのうえで強く感じるのは、いまイラクで起こっているのは、アメリカが世界といかに関わっていくかという、新しい戦略の確立と実行についての、試行錯誤の一部だということである。“ネオコン”非難の妥当性は アメリカが世界でどのような行動を取るかは、日本をふくむ他の国の人々にとって、一大関心事である。好むと好まざるとにかかわらず、この超大国が選択し実行する政策は、われわれに大きな影響を与える。であれば、なぜアメリカが特定の行動を選択するのか、先入観にとらわれず考えねばならない。とかくわれわれはこの国と国民についてわかったような気がしているけれども、それは本当なのだろうか。イラク戦争など個別の問題にかかわるアメリカの政策を理解したければ、あらためてアメリカの歴史や制度、憲法や思想をひもとく必要がありはしないか。そんな暇はないと言われるかもしれないが、「急がば回れ」という格言は、存外正しいような気がするのである。

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