南部、もうひとつのアメリカ

執筆者:渡部恒雄 2004年2月号
エリア: 北米

 昨年の暮れは家族そろって流感に罹り、正月料理の準備どころではなかった。見かねた隣人の主婦メアリーが、アメリカ南部の正月の「縁起もの」を我が家のために持ってきてくれた。ホッピン・ジョンという「ささげ豆」の煮込み料理で、白いご飯の上にかけて、お好みでタバスコ等で辛くして食べる。脂っこくない素朴な味とスパイシーな味付けは食欲を刺激し、病気で弱った我々日本人の胃にも優しかった。 アメリカでは、感謝祭やクリスマスには家族が揃い七面鳥の丸焼きなどの豪華なディナーを食べるが、正月はほとんど何の風習もない。しかし、このホッピン・ジョンは、正月に家族揃って食べるとその家に福を呼び込むという言い伝えがあり、アメリカ南部の正月料理として生き残っている。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席研究員。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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