洪水と渇水を解消する「河川連結計画」の実現性

執筆者:古池一正 2004年3月号

[ニューデリー発]日本の約九倍の国土に十億人が暮らすインドは、その多様性から亜大陸とも言われる。北部は万年雪をたたえたヒマラヤを望み、南部は灼熱の太陽に晒される常夏の世界だ。夏には四十度を優に超える暑さに乾き、雨期には大洪水で多くの人が家を失う。渇水と洪水が隣り合わせの厳しい自然環境の中で、多くの人々は運を天に預け、黙々と日々の生活を営んでいる。南アジア地域協力連合(SAARC)のまとめでは、人口の二六%は一日一ドル以下で暮らす貧困層だ。 しかし、もし洪水で溢れる水を、日照りでひび割れた大地に流せたらどうだろうか。家屋や農産物の流失は無くなり、田畑は豊かに稔る。人々の収入は増し生活も安定する。国内の河川を連結できれば状況は一気に改善するのではないか――。そんな夢の計画に、インド政府が本腰を入れ始めた。年七―八%台という好調な経済成長を背景に、貧困の宿痾から一気に抜け出ることを狙っているのだ。 河川の連結計画自体は新しい発想ではない。古くは英国統治時代の十九世紀に水路交通の充実を目指し南部の河川の連結が考えられた。一部は実現したが、鉄道網の整備が先行し計画は立ち消えになった。その後、水量の多い河川から少ない地域へ水路を造る計画がしばしば浮上したが、莫大な費用や、技術的な問題が常に立ちふさがってきた。

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