グーグルのポストバブル性

執筆者:梅田望夫 2004年3月号
カテゴリ: IT・メディア

 世界最高速スーパーコンピュータしかり、NASAの宇宙開発システムしかり、米国ハイテク軍隊しかり。「世界中探してもどこにも存在しないような物凄いシステム」というのは、たいていの場合、カネを惜しみなく投じて作られるものである。しかしグーグル(Google)のシステムは違う。カネを惜しみつつ作られた世界最高峰のシステムなのである。 グーグルの創業は一九九八年九月。エンジェル投資家によるシードマネーが尽きた九九年六月に、グーグルは二千五百万ドルの資金調達を行なった。しかし一転、さぁこれから勝負という時期にネットバブルが崩壊する。ベンチャーにとってのバブル崩壊とは、「もうこれ以上資金調達ができない可能性」を念頭に置いた戦略への転換を意味する。「日々増殖しつつ更新される世界中のウェブサイトの内容をすべて把握する」というアンビシャスなグーグルの構想に、カネを惜しみなく投ずることなどできなくなったのである。 カネがなければ知恵を出せばいい。グーグルは、剥き出しのPCハード(安く調達できる一世代前のモデル)を大量に並べ、リナックス等のオープンソース(無償で調達)をもとにソフトは自作するという基本設計で、世界最高峰のシステムを作り上げてしまった。しかも、システム開発から保守まですべて自力。システム構築・運営を丸投げするなんて贅沢はいっさいせず、博士号を持つ科学者連中が泥仕事にまみれている。前回も少しご紹介した元脳神経外科医がデザインしたこのシステムは、並列化されているPCが七万台を超えた。そして、相変わらずすべて自力で運営されている。いまや逆にこの巨大システム運営技術こそが、追走者にとっての参入障壁になっている。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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