【ブックハンティング】 ワトソン博士による現代ゲノム科学の総覧

執筆者:長谷川眞理子 2004年3月号
カテゴリ: 書評

 子は親に似る。ときには親を飛び越して、隔世遺伝がおこる。兄弟姉妹は互いに似るものだが、白い子羊に黒い子羊が混じることもある。こんなことは、大昔からよく知られており、これらに基づいて家畜や作物の品種改良が行なわれてきた。 しかし、遺伝の正体は長いこと謎であった。遺伝には単純な数学的法則があるということを示したメンデルの業績が、広く科学界に認められるようになったのは、やっと一九〇〇年のことである。 それが、その後の百年あまりでいったいどうなっただろう? 一九五三年には、遺伝子の正体であるDNAの構造が解明された。その後の数十年で、DNAがどのようにしてタンパク質を作り出すのかの詳細が明らかになった。そして人類は今や、自らの遺伝情報のあらましをすべて手に入れるに至った。ヒトゲノム計画が一応の終了を見たのは、予想より三年も早い二〇〇〇年のことである。二十一世紀は、遺伝子をさまざまに操作するバイオテクノロジーの時代となった。 思うに、遺伝学ほど、科学として急速に進歩したものもないだろう。物理学も化学も、ずっと古くからの蓄積をもとにしている。何もなかったも同然のところから、ここまでの急速な進歩を可能にした大きな第一歩は、まぎれもなく、DNAの構造解明であった。

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