【[検証]アメリカンスタンダード 10】 「海賊版天国」中国への懲罰をなぜアメリカはためらうのか

執筆者:田村秀男 2004年4月号
エリア: 北米 アジア

封切られたばかりのハリウッド映画が、安価な海賊版DVDで手に入る中国。それでもアメリカが制裁を発動しない背景には何があるのか。「カリスマ主婦」マーサ・スチュワート事件に見られるように、アメリカは経済犯罪については容赦しない。著作権などいわゆる知的財産権の保護と侵害への罰も、株式取り引き関連と並んで政府も議会も裁判所も徹底している。株式が「コーポレート・アメリカ」の根幹だとすれば、著作権や特許はアメリカの競争力の源泉、つまりアメリカン・スタンダードの代表格だからである。 知的財産でアメリカの対極にあるのが中国である。中国市場では海賊版が横行し、コンピューター・ソフトウエアの九二%(ソフトウエア著作権保護団体BSA=ビジネス・ソフトウエア・アライアンス=の二〇〇三年版報告)が違法コピーで、知的財産の「暗黒大陸」と呼ばれている。アメリカで封切りされたばかりの映画のDVDが、日本円換算百円余りで手に入る。北京では海賊版を路上販売しているところを警官隊が急襲し、密売人たちが脱兎の如く逃げ出す光景は日常茶飯事。だが警官は外国人が通る大通りだけ追いかけ、路地までは追跡しない。

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