国連事務総長の祈り

名越健郎
執筆者:名越健郎 2004年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

「イラクの年」となった昨年、国連は米英両国のイラク攻撃を阻止できず、権威が大きく揺らいだ。ブッシュ米政権は「国連の無力」を強調し、有志連合による新しい国際秩序を模索。ノーベル平和賞を受賞したアナン事務総長にとっては屈辱の1年だった。米政府にも、アナン氏は仏独露寄りとの不満がある。双方の冷たい関係は2006年の事務総長退任まで続きそうだ。 アナン事務総長が膝を負傷し、病院で医師の診断を仰いだ。「ひざまずいている時間が長いからこうなるのです。一体何をしていたんですか」「11月の米大統領選でブッシュ大統領が落選するよう祈っていたので……」 米軍のイラク攻撃に激怒したアナン事務総長が、対米経済制裁決議案の作成を命じた。 すると、側近がたしなめた。「そんなことをしたら、ニューヨークから立ち退きを命じられます」 アナン事務総長が安保理常任理事国にアンケート調査を行ない、「世界の他の国々が十分な食事を取れるにはどうすればいいか、率直な意見を聴かせてほしい」と要請した。しかし、調査は失敗した。 英国は「食事」の意味が分からなかった。 フランスとロシアは「率直な」の意味が分からなかった。 中国は「意見」の意味が分からなかった。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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