南アフリカに今なお残る心理的アパルトヘイト

執筆者:浅井信雄 2004年5月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: アフリカ

 今春のアカデミー主演女優賞を得た南アフリカ出身のシャーリーズ・セロンは受賞挨拶で「南アの誰もが(テレビでこの様子を)見てくれているでしょう」と述べた。南ア人口の一割強の白人社会に属する彼女を、黒人のムベキ大統領も「南ア全体の誇り」と賞賛した。 アパルトヘイト(人種隔離)の後遺症が国民に亀裂を残し、テレビを持たぬ貧しい黒人も多いが、大統領は南ア初のアカデミー賞受賞者の誕生を「国民統合強化の機会に」と期待したようだ。 第二次大戦後、人種隔離を国策としたのは世界でも南アだけだ。一九九一年、アパルトヘイト諸法が廃止され、九四年の全人種参加の初の総選挙で黒人主導政治が始まったものの、多年にわたって段階的に強化されたアパルトヘイトの残滓はまだまだ解消されていない。 人種隔離の基本理念は、少数の白人が多数の黒人を一定地域に封じ込めて他の地域の豊かな資源を享受することであった。それは大アパルトヘイトと小アパルトヘイトの二つに分けて実施された。 大アパルトヘイトは地域的隔離を意味し、具体的には黒人を部族別に特定の土地に住まわせ、それをホームランドとして独立させる。住民には独立ホームランドの国籍を与え、旅券も持たせる。その目的はただ一つ、南ア国籍の黒人を無くすことにほかならない。

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