物語は一九九八年四月一日の新日銀法の施行と速水総裁体制の発足と共に幕を上げる。外部出身者が多数を占める政策委員会という新しいガバナンス構造の下で、日銀は初めて政治を含めた外界に直接の説明責任を負った。「なぜ」を上手く説明できないままに実施されたゼロ金利導入(九九年二月)、円高を巡り日米協調を演出しようとした政府との不協和音(九九年五月)、速水総裁がクリスチャンの信仰心を支えに、政府の反対を押し切って「強行」したゼロ金利解除(二〇〇〇年八月)、その後の景気後退で余儀なくされた量的緩和への転換(〇一年三月)。こうした金融政策の展開を日銀と政府当事者の証言の積み重ねで語っていく本書『ゼロ金利』(軽部謙介、岩波書店)は、ドキュメンタリーとして一級品の迫力だ。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン