行き先のない旅 (13)

「エコテロリズム」と戦う知恵

執筆者:大野ゆり子 2004年5月号
エリア: ヨーロッパ

 友人たちが、ここのところ折にふれて同じ教訓を口にする。フランス人のイザベル、英国人のピーター、ドイツ人のマルク。それぞれ別に会って、別の話題をしているのに、終わりは偶然にも“Carpe Diem!”。「将来の憂患を思わず、今を最高に楽しめ」という古代ローマの詩人ホラティウス(紀元前六五―前八年)の言葉で、各国語に残っている金言だ。 明日、自分がテロに巻き込まれるかもしれないという漠然とした不安感は、約二百人の死者を出したマドリッドの列車爆破テロ以降、ヨーロッパ人の中で、よりはっきりと意識されるようになった。それは、イラク派兵に積極的で、ロンドンへのテロを「不可避」と述べた英国やイタリアなどにとどまらない。米国との間に距離を置いていたフランスも、イスラム教の生徒に公立学校内でヴェール着用を禁じる法案を可決した直後、「イラク、アフガンでの武力行為と同罪」としてテロリストから脅迫を受けている。

カテゴリ: 環境・エネルギー
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執筆者プロフィール
大野ゆり子(おおのゆりこ) エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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