バングラデシュに残る列強たちの足跡

執筆者:浅井信雄 2004年6月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

 アジアで初のノーベル文学賞受賞者は、一九一三年の詩人ラビンドラナート・タゴールである。彼が活躍した英領インドのベンガル地方では政治、経済の他、十九世紀の「ベンガル・ルネッサンス」により文化、芸術もまた花開いた。『大地のうた』などのリアリズム映画もベンガルの土壌の産物である。 ガンジス川とブラマプトラ川が合流する広大な沖積地帯にあるバングラデシュは「ベンガル人の地」の意味だ。多数を占めるイスラム人口は、世界第三位にランクされる。ベンガル民族とイスラム教と氾濫に悩まされる農村が、国民の性格を決定づける三大要素である。 米中央情報局(CIA)の二〇〇三年七月現在の推定で、総人口は一億三八四四万八二一〇人。一九九八年時点の民族的内訳はベンガル系が九八%、残り二%のなかに部族集団、非ベンガル系イスラム教徒などをあげている。小規模の部族集団は多彩で、さながら民族や人種の坩堝の感もある。 この地域の初期の住民には原始オーストラロイド、地中海系コーカソイド、インド・ヨーロッパ系のアルメノイドの血が流れているといわれ、ベンガル語は七世紀に独自の形を整え、十一世紀にはベンガル語文学も創作されている。 十三世紀、イスラム教徒のアラブ、ペルシャ、トルコ諸民族が流入すると、ベンガル民族が変質し、民族・宗教の構成や文化状況も変わってゆく。

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