【ブックハンティング】 今明かされる“代行返上”の実態

執筆者:山崎元 2004年6月号
エリア: 日本

 代行返上とは、代表的な企業年金である厚生年金基金が国の厚生年金に代わって運用してきた資産部分を国に返すことを指す。企業は年金運用のリスクを軽減できるが、返上のためには基金の資産のざっと半分程度を現金化するので、これに伴い大量の株式が売られるとして、昨年春の株価下落の際には大いに悪役視された。だが、現実には、その後株価が急回復する流れを辿った。今となっては些かタイミングが悪いのではないか、と少々心配しながら本作『代行返上』(小学館)を読んでみた。 心配は全くの杞憂であった。その他の要因があって現実の株価が回復したことは事実であり、これはマーケットの懐の深いところなのだが、代行返上売りを利用して外資系証券とヘッジファンドが組んで株価操作的なディールで大儲けするという仕掛けのリアリティーには何ら問題はなかった。今後の読者の楽しみのために手口の詳細はここに書かないが、このパターンはマーケットで現実に使われてきたし、これからも同種の手口が使用される可能性がある。 株式市場では、証券会社(主に外資の)やヘッジファンドの売り崩しが話題になることがあるが、仕掛けの中心に居る連中の手口は、自分が大きく空売りをして噂を流すというような自分を大きなリスクに長く晒す素朴なものではなくて、他の市場参加者の動きに便乗しながら、自分が使えるマーケット・インパクト(売り買いによる株価の変動)を最大限に悪用するずるくて用心深い(当たり前だ!)ものであることが分かる。

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