ナノテク開発が覗いた「死の谷」

2004年6月号

 ナノテクノロジー(超微小技術)が次世代技術の中核として期待を集めている。政府は二〇〇一年にナノテク基本戦略を発表。ナノ(十億分の一)メートル単位の世界で新素材などを開発・応用するこの市場は、二〇一〇年に二十兆円にも拡がると期待されてきた。 ところが具体的な成果が見えてこない。NECは昨年六月に鳴り物入りで発表した「カーボンナノホーン」を使ったノート型パソコンで、産みの苦しみを味わっている。パソコンにカートリッジ式の小型燃料電池を搭載。電池の電極に超微細な突起が無数に生えているナノホーンを使用し、電極の表面積を広げて発電効率を高める。「電源の無い場所で連続四十時間使用可能。値段はこれまでのノートパソコンより一万円高い程度」というセールスポイントは市場に高く評価された。NECは今年中にこのパソコンに実用化のメドをつけ、二〇〇五年春にも発売する計画だった。 ところが、「大きなエネルギーが必要になるパソコンの起動時に、まだ十分な出力が得られない」と、NEC関係者は打ち明ける。NECは優れた電気特性を持つナノテク素材「カーボンナノチューブ」(筒状炭素分子)の発見者で、いま日本人で最もノーベル賞に近いとされる飯島澄男・特別主席研究員を擁する。自他ともにナノテクで一歩抜けた存在と認めるNECが燃料電池パソコンの市販化に遅れれば、企業イメージの失墜は免れないとの焦りが募る。

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