【インタビュー】藤本隆宏(東京大学大学院経済学研究科教授) 日本の“ものづくり力”はまだまだ底上げできる

執筆者:フォーサイト編集部 2004年6月号
エリア: 日本

いま日本企業が構築すべき能力は、本社の戦略構想力、ブランド力だ。現場発の産業論を説く製造業研究の第一人者に聞く。――日本の“ものづくり”に対する見方が錯綜しています。中国脅威論に象徴される悲観論がある一方で、製造業の復活が進んでいるとの期待論もありますが。藤本 現在の議論は非常に大雑把でとっちらかっている。自動車とパソコンの本質的な違いを見ずに産業全体を「十把一絡げ」に論じ、さらに企業収益の増減とものづくりの力を混同する精度の悪い産業診断をしている。だから財務が良かった時は一方的に強気が、逆に悪かった時は弱気が支配する。 大切なのは、現場のものづくり力に立脚した現場発の産業論だ。中国脅威論にしても、中国が労働集約的で部品を組み合わせるだけで済む製品分野で競争力を発揮しているのを、全体の論にしてしまっている。現場のものづくり力は、簡単には強くなったり弱くなったりしない。日本経済を引っ張っているのは製造業を中心に全体の十数%の企業と私は推定するが、その部分はさほど力が弱まっているとは思っていない。――それをどんな動きで実感しますか。藤本 日本のものづくり力の強さは、自動車や電気製品のように特殊に設計された個々の部品を調整しながら製品全体の性能を引き出す「擦り合わせ(インテグラル)型」産業で発揮され、実際、そのような製品が国際競争力を発揮してきたと考えている。最近の動きでは、例えばシャープが、なぜ外国ではなく国内で何千億円も投資して液晶の工場を作るのか。それは擦り合わせ型の技術をベースとしてできているからであり、実際、擦り合わせの全貌を知っているのはシャープの社内でも限られた人たちだ。

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