世界人間関係マップの出現

執筆者:梅田望夫 2004年7月号
カテゴリ: IT・メディア

 六次の隔たり(6 Degrees of Separation)という有名な学説がある。「地球上の任意の二人を選んだとき、その二人は、六人以内の人間関係(知己)で必ず結ばれている」というこの学説。数学の「予想」ではなく現実社会の話だから証明の術はない。しかし見知らぬ地球上の誰かと自分の関係を想像し、「なるほど六人(それが七人でも別に大差ない)くらいを介せば、確かに誰とでもつながるだろうな、世間は狭いと昔から言うものな」と、少し考えれば実に納得感のある学説なのである。 この学説自身には大した価値がないけれど、現実に「地球上のすべての人々が誰とどういう知己関係にあるか」という「巨大な人間関係マップ」を構築し、そのデータベースを握ることができれば……。「ソーシャル・ネットワーキング」事業というおしゃれな名前のかげには、こんな怖ろしい構想が隠されている。その主役はまたまたグーグルだ。「ソーシャル・ネットワーキング」という言葉が、燎原の火の如くシリコンバレーを覆い尽くしたのは、昨年末のことである。 悪名高い「出会い系サイト」につきものの危険は、趣味や嗜好などのキーワードで相手選びをしたとき、相手が本当はどんな人間なのか全くわからないことによって生ずる。もし「友達とその友達たち」だけをネットワークすることで信用を醸成できれば、全く質の違う「出会い系サイト」が生まれるはずだ。二〇〇二年に創業したシリコンバレーのフレンドスターは、こんなコンセプトのサービスを二〇〇三年三月にスタートし、わずか半年で百万人以上の会員を集めるに至った。フレンドスターは、新しいタイプの「紹介型出会い系サイト」というエサ(アプリケーション)で、百万人の人間関係マップの端緒を、わずか半年の間に自己増殖させたのである。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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