【ブックハンティング】 元首相が来し方を語る意味

執筆者:馬淵澄夫/屋山太郎 2004年7月号
カテゴリ: 国際 政治 書評

「終身比例一位」の証文を一方的にホゴにされた中曽根康弘元首相は「政治的テロだ」と激怒した。私も小泉総裁のやり方は「筋が通らない」と憤ったが、反面、中曽根さんはバッヂをはずした方が発信力が強まるのではないかと予想した。というのも政界に中曽根大勲位以上に政治的見識を持った政治家が見当たらないからだ。自民党議員という立場では意見を求めにくい政治団体やマスコミも自由人となった中曽根さんからは意見を拝聴し易くなる。 果たして内外の新聞はことあるごとに中曽根氏の意見を求めてくる。野党である民主党の鳩山由紀夫氏のグループは憲法問題の勉強会に中曽根氏を招いた。痛快なのは朝日新聞までが中曽根氏の回顧談を載せるようになったことだ。朝日新聞は中曽根首相が初の訪米で「日本列島を不沈空母のようなものにする」といった時から中曽根氏をタカ派だといって攻撃し続けた。 政界では一語で内閣の旗幟を鮮明にする言葉があるが、「不沈空母」ほど日米同盟関係を語る言葉はない。それ以前の自民党内閣は三木武夫氏が「等距離外交」、福田赳夫氏が「全方向外交」を唱えていた。 これは国内の政敵である社会党との激突を避け、国際的には共産国にも良い顔をしたいとの思惑から発したものだ。しかし「不沈空母」の一語によって、日本は西側の一員であるという立場を鮮明にし、国民も覚醒した。その厳とした姿勢によってレーガン大統領とのロン・ヤス関係が生まれた。レーガン氏は冷戦を勝ち抜いた歴史的功労者だが、中曽根氏も十分にその功績がある。レーガン氏の国葬に参列した中曽根氏は心から同志の死を悼んだことだろう。

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