談合体質を引きずる「鉄鋼合併」は国益か

執筆者:杜耕次 2011年2月24日
タグ: 日本
経営統合検討の発表記者会見で握手する、新日本製鐵の宗岡正二社長(左)と住友金属工業の友野宏社長 (C)時事
経営統合検討の発表記者会見で握手する、新日本製鐵の宗岡正二社長(左)と住友金属工業の友野宏社長 (C)時事

 企業再編の審査を巡る公正取引委員会の動向がにわかに注目を集めるようになった。きっかけは2月3日に発表された新日本製鐵、住友金属工業の合併方針。両社は公取委の事前相談制度を敢えて利用せず、いきなり「2012年10月を目処に統合するべく検討を開始する」と公表した。「統合によってグローバル化を担う人材を捻出でき、スピードアップする」(新日鐵の宗岡正二社長)という大義名分を世に訴えることで、厳格といわれる公取委の審査姿勢を牽制した形だったが、これを受け、公取委が早ければ11年度から事前相談制度を廃止するとの報道がなされた(2月19日付日本経済新聞朝刊)。  要は、鉄鋼業界国内1位と3位の合併を進める新日鐵と住金に強力な追い風が吹き始めているということだ。短期間で極秘の決断をしたとされる両社の首脳は称賛され、「この統合は産業界全体にもいろいろなプラスの影響を与える」(海江田万里・経済産業相)と政府も後押しする構え。産業界に悪評の高い事前相談制度を引っ込めようとする公取委の軟化は「政府や経済界、マスコミなどから強まっているプレッシャーが理由」というのが関係者のもっぱらの見方である。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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