堕ちゆく世界の迷走 (9)

原発事故の先にある剣呑な国際政治の力学

終始笑顔だったが……(c)AFP=時事
終始笑顔だったが……(c)AFP=時事

 5月26日からフランスのドービルで開かれた主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)。主催国フランスのサルコジ大統領の肝いりで、原子力サミットとなった。福島第一原子力発電所の事故がきっかけだが、菅直人首相は被告席に立たされた。  フランスの狙いは、サルコジ大統領の再選戦略と密接にからむ。失業問題などで世論の支持が低迷するなか、国際舞台での派手な立ち回りと外交上の勝利が欠かせないからだ。国内の電力の7割を原子力に依存するフランスとしては、何よりも福島の事故を機に高まる反原発のうねりを抑える必要がある。そのために、フランスは国際的な原発の安全基準をつくることを働きかけている。  地球温暖化問題に取り組もうとする米国のオバマ大統領も、原発推進の選択肢を捨てたくない。英国やイタリアもしかり。反原発を掲げる緑の党に脅かされているドイツを除き、G8内では直ちに脱原発に舵を切ろうという国はない。そのドイツでさえフランスの原発でつくった電気を融通してもらっている。菅首相の冒頭演説はこの辺りの国際環境を反映したものになった。

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