世界は金融危機を挟んで様変わりしてしまった。 金融危機の本質をどう見るか。単なるリセッションでも金融システムの大激震でもない。恐らく後世、歴史家はこの金融危機を振り返り、時代を画する分水嶺と見るに違いない。 筆者は金融危機が勃発した時ドイツに在住していた。 米国の住宅市場を不安視する見方は金融危機前から多々あった。しかしヨーロッパはそれを米国の問題と見ていた。よもやヨーロッパが激震に襲われるかもしれないなどと見る向きは皆無だった。08年夏、欧州中銀のトリシェ総裁と懇談する機会を持ったが、その時トリシェ総裁が、ユーロ発足後の歩みを振り返り、しみじみと述べた言葉が印象的だった。曰く、「10年前、誰がこれほどのユーロの発展を予想しただろうか。当時、ユーロを巡っては制度的に欠陥があるとの見方も強かった。その行く先を危ぶむ声もそこかしこに聞かれたものだ。然るに10年経ち、ユーロは不動の地位を築いた。今や押しも押されもしない第2の基軸通貨だ。この間のユーロの歩みを振り返る時、自分は深い感慨に襲われざるを得ない」。
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